おふろミステリー4 ラストストーリー

⑦私の推理Cの人物が犯人だと思う理由や証拠を思いつく限り全て書いて下さい

・部屋に落としていたバッチから犯人は商店街の催し担当の人物と考えられる
・凶器のシャベルと手袋をよく見ると、手袋の右手側に青いシミがついており、右利きの人物の犯行だとわかる
・探偵が初めてレストランを訪れた時、ディクソンは「お近くですよね?」と言っており、なぜか探偵の住まいを知っているため、探偵の部屋に侵入した犯人の可能性が濃厚
・夜に共同菜園に自由に出入りできる人物(菜園の鍵を持っている)
・探偵を襲う動機のある人物は、ハリエットのストーカーか、7年前の犯人のどちらか。
・バケツの中にある手袋が菜園作業用の軍手ではなく、飲食店員や執事が料理を運ぶ時に使用する給仕用の手袋である

「前にあった時にあなたが言っていた通り、真実はとても残酷ね。ハリエットに本当のことを伝えるべきかどうか迷ってしまうわ……」
「知りたいんじゃないですかね!あ、いや、自分だったら、結婚しようと思っていた人との最後ってちゃんとしておきたいなって」
「最終的な判断はブレンダさんにお任せしますが、私もポアソンと同意見です」
「そうね。私たちの方からあなたたちに依頼をしたんですもの。最後の調査報告をもう1人の依頼人である我が娘にきちんと報告しておきます。また何かあったら……いいえ、もう何もないようにしないとね。探偵さん、ポアソンさん、どうぞお元気で」
「ブレンダさんも、お元気で」
「お元気で!きっとこれから幸せなことがいっぱい待ってるはずです!応援してます!」

【裏エンド】
果たして私の推理は当たっているのだろうか。なぜかスッキリしない。
「先生。もしかしてご自分の推理に納得していないのですか?まぁ、正直ちょっとモヤっとする部分があるんですよね。先生も同じじゃないですか?ほら、お店のこととか」
店のこと?ああ、そうか。そういうことも考えられるか。
ここからは私の妄想と憶測による推理になるが、ディクソンは本当は結婚詐欺師なのだろうか。よく考えてみれば、たった1ヶ月で店が完成しているのは不思議だ。初めての自分の店ならば、ゆっくりと内装などの計画を立て、数か月かけて完成させるのではないだろうか。そうなると、あの店はキャロルが殺害されるずっと前から計画されていた可能性も考えられる。だとすれば、キャロルは両親が自身の結婚を反対するのなら家を出ようと覚悟し、ディクソンと一緒に店をオープンしようと考えて資金を提供したのかもしれない。きっとキャロルの両親は、ディクソンの生い立ちが貧しいことから自分の娘にはふさわしくない相手だと思ったのだろう。そもそも事件当日を迎える前から金庫の中身はキャロルが両親に内緒で店の資金につかって空の状態で、だからこそ部屋が荒らされた形跡がなかったのかもしれない。

しかし、キャロルは毎日のようにルイスに「アイツは結婚詐欺師だ」と言われつづけ、その言葉によって両親も詐欺師だと信じ込み、やがてはキャロル自身もディクソンを疑うようになってしまった。そして、事件の夜、彼女はディクソン宛に書いた手紙を彼の目の前で破り捨て、もう信じられないと伝えたのかもしれない。ディクソンは初めて本当に愛した人に信じてもらえなかった悲しみ、裏切られた怒りの気持ちでいっぱいになり、咄嗟に犯行に及んでしまったのではないか……。
そう考えると、ディクソンはハリエットのことも本当に愛していたのではないかと思えてくる。結婚しようと本気で考えはじめた時、またしても親に貧しいことで蔑まれ、怪しいと疑われ、自分の幼い頃の過去がある以上はずっと幸せになれないのか?と絶望していたかもしれない。どうしてもハリエットと結婚するために、探偵である私が7年前の事件の調査をすることを止めようとし、ハリエットと自分を引き裂こうとするエイミーに罪をきせることで、彼女との関係に終止符を打ちたかったのだろう。

もう1つ気になることがある……。母子家庭で育った少年が大人になって自分の店を持とうとするとき、母親を迎えいれないものだろうか?マクブレイン家の両親とは頻繁にあっているようだが、ディクソンの母親の話は彼からもハリエットやブレンダからも聞かなかった。となると、彼の母親はどこに?いや、もう他界しているのかもしれない。まだディクソンが未成年の頃に親を亡くしているのなら、然るべき場所に預けられたかもしれないし、近所に親代わりのような存在の人物がいたかもしれない……。
なぜかそのことを考えた時、私の頭の中にはマリアンヌの顔が浮かんできた。お許しくださいと菜園で叫び続けていたマリアンヌ。今になって、もう一度事件のことを調べなおして欲しいと依頼してきたマリアンヌ。もしかすると、7年前のあの時は彼のことを信じたい気持ちのほうが勝っていたが、時がたって冷静になってみると何か違和感を感じ、やっと真実と向き合う覚悟ができたのでは。ああ、彼女の一連の行動の理由が母心だとしたら……。あのローリエもマリアンヌの勧めで育て始めた想い出のハーブだったりするのか……。

これは私の妄想に過ぎない。証拠から紡ぎ合わせた結末は先ほどブレンダに述べた推理が妥当だろう。しかし、私だけでなく、ポアソンも感じ取ったモノこそ、探偵の勘というやつかもしれない。
「ポアソン。君の将来が楽しみだ」
「えぇ!先生、いきなりどうしたんですか!?」
色々な思いが巡るが、今はただ、この街の平和を祈るばかりだ。切ない想い出が詰まった、この追憶の街角の平和を。

★ボーナスポイントはコチラ

inserted by FC2 system